ロンジン ウィームス


本日はコレクションをご紹介します。

ロンジンのパイロットウォッチ「ウィームス」です。

ロンジン ウィームス

初めてウィームスを見たときの感想は「カッコいい!!」の一言でした。

私のコレクションは1940年代の個体です。
特徴的なケースデザインとステンレスの鈍い輝きに、針や文字盤の全ての経年変化が融合して魅力を増しています。3時位置の竜頭は交換されていますが、全体の雰囲気は損なわれておらず、個体の歴史として充分に許容範囲です。

パイロットウォッチなのでメンズテイストが強めですが30mmと小ぶりなサイズなので、女性の私でも違和感なく着けられます。

パチリ。
ロンジン ウィームス

さて、このカッコよくてたまらないロンジンのウィームですが、1927年にアメリカ海軍のフィリップ・ヴァン・ホーン・ウィームス(Philip Van Horn Weems)大佐が考案し、2年後の1929年に完成したパイロットウォッチの名品です。

大きな特徴はなんと言っても回転ベゼルの構造です。
回転ベゼルの数字とメモリは「秒」を表しています。2時位置の竜頭はベゼルをロックするためのものです。

なぜ回転ベゼルに秒表示が必要だったのでしょうか。

当時パイロットは飛行しながら地図・コンパス・時計を駆使し飛行ルートを確認していました。これを航空航法(エアナビゲーション)といいます。

ウィームス大佐は多数の航空航法を考案した第一人者でした。

彼が考案した航空航法に使用する時計には秒単位の精度が必要でしたが、当時の技術では秒針まで制御することが困難でした。

現在ではハック機能(秒針停止機能)があるので秒まで調整可能です。具体的には、竜頭を引くと秒針が停止するので、秒針が12時位置に来た時に竜頭を引けば0秒で時間を合わせられるということです。
竜頭を引いて秒針を停止する機構自体はそれほど複雑ではありませんが、ハック機能が一般的になるのは1960年代に入ってからですので、1920年代の技術力では部品の加工が難しかったのかもしれません。

そこでウィームス大佐は、秒針の制御ではなく、秒目盛りを振ったベゼルを回転させることで秒単位まで時間を合わせるシステムを考案し、ロンジン社と共同開発しました。合わせた秒がずれてしまわないように2時位置の竜頭でベゼルの回転をロックできるという隙のない設計です。

このシステムは当時としてはかなり画期的だったことと思います。
時計の精度を高める切磋琢磨はもちろんのこと、必要な機能を実現する知恵と創意工夫を感じることが出来る素晴らしいモデルです。

この時計と地図とコンパスでどのようにルートを割り出すのかは分からないので私では機能を充分に活かすことが出来ませんが、こんなに素敵な時計を生み出したウィームス大佐とロンジン社に敬意を払いながら、大切に愛でていこうと思います。

2016年11月13日 | カテゴリー :