アンティークウォッチに見られる『竜頭抜け』の原因

アンティークウォッチの故障として「竜頭がすっぽ抜ける」という症状があります。今回はその原因についてご説明いたします。

竜頭が抜ける原因は、ゼンマイの巻上げや運針等の竜頭操作ではなく、竜頭の出し入れによるものです。

竜頭の中心には「巻き真」という棒があり「裏押さえ」という部品でムーブメントから抜けないようになっています。1970年より前のほとんどの時計は、裏押さえをネジでムーブメント本体に固定しています。

この裏押さえを固定するネジが、竜頭を出し入れをする際にわずかに回転します。繰り返すうちに徐々にネジに緩みが生じます。

アンティークウォッチに見られる『竜頭抜け』の原因 シチズン*竜頭を引くと赤丸のネジが少し動きます。

ネジが緩むので裏押さえの効果が薄れ、竜頭が抜けてしまうのです。
1970年からは、ほとんどのメーカーが裏押さえにネジを使わない構造に移行したので、竜頭抜けが激減しました。

メーカーによりネジに緩みが出てもバネ状の部品で押さえる構造もあります。
こちらはバネ構造がある1960年代のスミスです。

アンティークウォッチに見られる『竜頭抜け』の原因 スミス

ネジは回転し緩みが生じますが、例えネジが外れても機能する優れた構造です。この構造の場合、バネが壊れると竜頭は抜けます。

裏押さえをネジ留めしている構造の場合、竜頭のすっぽ抜け対策は『常にゆっくりと出し入れする』以外ありません。

竜頭を出し入れする時のネジの回転を防ぐことはできませんので、裏押さえの効力が弱まっても竜頭が抜けきらないように、ゆっくりと出し入れしてください。